グランドかアップライトか?

 最近、新築される住宅の場合、15とか20畳以上のリビングが普通になってきました。そのせいか、最初からグランドピアノの購入を検討されるお宅が増えてきており、統計上もグランドピアノの売上は伸びてきております。また、グランドへの関心も高まってきており、「本当は、グランドが欲しいのだけど」とか、「どう違うの?」とかの質問を良く受けます。ここでは、まず一般論としてその違いについてご説明いたします。
 まず、違いを良くご理解いただくためにも、両者の共通点というか、ピアノの基本原理をおさえておきましょう。当たり前のことですが、ピアノは、鍵盤をたたくと、その力が
内部のアクションと呼ばれる複雑な機構を通じてハンマーに伝えられ、ハンマーが弦をたたき、その弦の振動が、響鳴板と呼ばれる大きな木の板でできた部分に伝わり、あの豊かな音となって、私たちの耳に届くのです。ここまでは、共通です。
 しかし、この共通の原理の中にすでに大きな違いの原因が潜んでいます。それは、響鳴板がアップライトの場合は垂直に、グランドは水平に組みこまれている点です。
 従って、グランドの場合は、アップライトよりも、長い弦長と広い響鳴板が可能になり、その結果、ダイナミックで大きく、豊かでゆったりした音が期待できるのです。この点がまず、第一の違いです。
 グランドの場合、小型の物でも奥行きは、いわゆるベビーグランドといわれるものでも150p位あり、一般には、170とか180pクラスの物が普及しています。コンサートホール等で使用される、いわゆるコンサートグランドになると最大の物で3メートル以上ある物もあり、200人以上の大オーケストラをバックに、2000とか3000人以上の観客を感動させることが可能なものもあります。アップライトの場合は高さになるわけですが、現行品のものは、最大でも132pが最大です。それ以上の高さにすると、不安定になってしまうからです。
 第二に、同じ理由から、弦はアップラアイトの場合は垂直に、グランドの場合は水平に張られています。その結果、前者のハンマーは横から打弦しバネで引き戻されますが、後者は下から打弦し自然に戻ります。そのため、グランドは、鍵盤の戻りは早く、スムーズで早い連打が可能です。アップライトでは難しいトリルも、グランドでは、比較的楽にこなせます。
 第三に、これも同じ理由から派生するのですが、アップライトは、裏側から出た音が壁などに反射してくる音を聞くのですが、グランドは、上のふたを開けて頂ければ、上からも下からも直接音が聞こえてきます。したがって、ここでも後者のほうが、きれいな音を直接聞くことが出る点で勝ります。
 最後に、グランドのソフトペダル(左側)を踏み込みますと、鍵盤が右側に少し移動するのは、ご存知のことと思います。このとき、実は内部のアクションひいては、それに付随するハンマーも一緒に移動しています。それにより、通常は1本のハンマーで3本の弦をたたいて発音する(低音部は別ですが)のですが、ハンマーが右に移動するため2本の弦だけをたたくようになります。したがって、確実に音を3分の1弱くすることができるわけです。この点、アップライトの場合は、ハンマーを弦に近づけて打弦距離を短くすることにより、同じ効果をを期待するのですが、確実性の点でグランドに分があるのです。 以上のように、基本的な構造上の違いから、一般論としてはグランドが勝っていることはご理解いただけたことと思います。
 しかし、何度も「一般論としては」とお断りしていることにお気づきでしょう。グランドが優れているのは分かっていても、実際には大きすぎる音量や設置スペースや場合によってはご予算の問題などでグランドのご購入に踏み切れない方のほうか多いのが実情です。つまり、一般の住宅を前提にした場合、実は適度な音量、省スペース性、もちろんご予算の面などでは、アップライトがはるかに勝っているのです。
 したがって、スペースやご予算に余裕がある方は、できればグランドになされるほうが良いでしょうし、ましてや音大受験を目指す方や本格的にピアノを極めたいとお考えの方にとっては、グランドピアノは必需品といえるでしょう。
 しかし、いま、国産のグランドからヨーロッパのアップライトへ買い換える方がけっこう増えています。日本の鍵盤楽器の普及の歴史を振り返って考えてみますと、61鍵位のオルガンからアップライトピアノ、そしてグランドピアノへと段々に、その図体も音量も大きくなってきました。しかし、その一方で、ここ最近、大きさへの飽くなき挑戦に疑問を持ち、大きく迫力のある音よりは、音量はほどほどでも気に入ったきれいな音をという方が目立って増えてきています。その意味では、わが国のピアノを愛好なさる方々も成熟の域に達しつつあるのかもしれません。成長期には、分厚いビーフステーキに目が無かった方でも、ある程度年を重ねますと、おいしい物を少し食べたい人に代わります。
最終的には、用途、部屋のスペース、好み、そしてご予算などを考慮しておきめになることです。

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