中古ピアノの品定め
ピアノの購入をご検討の方から、「中古ピアノを買おうと考えているのですが、ピアノのことはよく分からないので心配で」という話をよく聞きます。確かに、特に初めてピアノを買われる方にとって、何を手がかりに、どう選んだらいいのか見当もつかないのが当然でしょう。
このコラム集の『新品か中古品か』の中で、「安く造ることだけを考えて造られた低価格帯の新品よりは、よくできた中古品のほうが良いのでは」と書きました。しかし、中古ピアノになさるにしても、実際に一台のピアノに絞りきるのは、たいへんな決断でしょう。 とりわけ、中古品は、製造された年代、使用された程度、その間の手入れの具合、そしてとりわけ店頭に出す前の修理・調整の程度などによってかなりの品質的な差があるのが普通です。したがって、その状態によって販売価格が違うのが当たり前だと思うのですが、実情は同じメーカーの同じ型番の商品は、大体近い価格帯で販売されています。したがって、販売価格が何万円か安いだけで選んではたいへんなことになります。
そこで、ここでは、国産の中古ピアノの品定めに役立つ幾つかのポイントをご紹介いたします。
≪一般論≫
国産のピアノの場合、その寿命は、設置場所や使用形態によっても違いますが、一般には4,50年と言われています。ただし、これは2,30年使用して、オーバーホールや再調整をした場合で、何もしないで使い続けることは不可能です。今一番良く出回っているのは、国産ピアノの販売が最も多かった1970年代の物が多く、ほとんどの商品がオーバーホールや再調整を必要とする年代に入っているわけです。
したがって、オーバーホールや再調整(リニューアルとも言っておりますが)がきちっとなされた商品を選ばなければなりません。とはいっても、ほとんどのピアノ店では、専門工房でリニューアルされたものばかりでなく、直接下取りや買取して外装を多少磨いて、傷はマジックインクで目立たなくした程度の物でも平気で「リニューアル済みです」と説明しているようです。したがって、そこの見極めが肝心なのです。次の具体的な説明を参考にしてください。
ただ、この年代もものは、ピアノメーカーがピアノメーカーとして元気だったころの商品であり、最近のものよりもしっかりできているのが多いようです。年代が新しいだけでは必ずしもいいものではありません。
≪外装のチェックポイント≫
ピアノは、2,30年も経つと外装に傷がついたり、汚れが目立つようになります。また、ペダルや蝶番や鍵穴などには金属が使われており、変色していたり、場合によっては錆びて腐食してしまっている場合もあります。
当社工房では、ごく新しい商品を除いて、ほとんどの場合、傷を補修し全体または部分的な塗装を施し、バフという機械を使って何段階にも分けて磨き上げます。また、金属部分も錆びや汚れを除去し、研磨して艶を出します。細かなビス類は、ほとんど新しい物と交換しています。こうすることによって、新品同様の輝きが戻ってきます。
したがって、傷がそのままだったり、マジックインクで隠してある程度では、とても「リニューアル済み」とはいえません。また、蝶番やビスの部分が錆びていたり埃が隙間に残っていたりする場合もありますので要注意です。
≪鍵盤のチェックポイント≫
鍵盤は、直接手を触れる部品でもあり、消耗や汚れが目立つ部分です。特に白鍵については、ひび割れが無いか、両脇の木部の部分が汚れてないかを確かめるべきでしょう。
また、ヤマハのピアノによく見られるのが、木口(こぐちといい、白鍵の一番手前の部分)が変色したり、場合により反り返って剥がれそうになっているものもあります。当然補修が必要です。
一方、調整面では、高さがまちまちだったり、戻りが悪かったり、場合によっては戻ってこないものもありますので要注意です。また、鍵盤の隙間が不均等だったり、左右に寄せてみて遊びがあまりに大きな場合は、底の部分の穴の内側に貼られているクロスが擦り切れているか、虫食いにあっている場合が考えられます。虫食いは鍵盤の下に敷いてあるパンチングクロスにも考えられます。
また、鍵盤の重さも大切です。弾きやすいのが一番ですので、異常に重い場合も弾きにくいので避けるべきでしょう。ただ、重さや深さは、ある程度は、調節可能なので相談してみるべきす。
≪内部のチェックポイント≫
上前板と下前板と呼んでいますが、正面の上下の板をはずしますと内部が良く見えます。チューニングピンや弦が錆びていないか、アクション(細かな機械の部分)や底板に埃がたまっていないかなどをチェックしましょう。
≪アクションのチェックポイント≫
この部分は、素人ではなかなか見方が難しいのですが、その分一番重要な部分でもあります。最低、ブライドルテープとフレンジコードという部品が切断していないかだけは確認すべきでしょう。後者の場合、これもヤマハに多いのですがある年代の物は、ほとんど切断がみられます。そのまま平気で販売している店も多いのですが、それは言語道断として、おおかたの場合、すでに切れている部分だけを修理して、残りはそのままのいうのが普通です。当社では、一本でも切れている場合、全部交換しています。
≪ペダルのチェックポイント≫
まず、右側のラウドペダルの踏み込んで、音を鳴らして、ペダルを戻してみてください。これで出ていた音が止まるのですが、音が残っている場合は、アクションについているダンパーといわれる、弦を抑える部品の調整が不十分だということになります。
また、中央のペダルは、アップライトの場合、弱音ペダルといわれ、音を小さくして弾きたいときに使うのですが、これを踏み込んで左に寄せてみてください。高音部から低音部まで全体的に音が小さくなれば合格です。
左側のペダルは、ソフトペダルといい、全体的に音を弱くするときに使うのですが、あまり問題は起こりません。
最後に、ペダルを踏み込んだときにきしむような音がしないか、確かめてください。変な音がする場合は、ペダルの取り付けか底板に問題がありそうです。
≪音のチェックポイント≫
音については、好みの分部が大きいのでいちがいには言えないのですが、まず、高音部から低音部までできるだけ均等にバランスよく出ているのが理想です。
また、異様にかん高い音や、拍子抜けするように抜けが悪い場合は避けるべきでしょう。さらに、これまた、ヤマハに多いのですが、低音部の巻き線の不良で音の伸びが悪くなっている場合が結構あります。低音部の音は、「ボーン」と鳴りますが、「ボン」とつまった音がする場合がそれです。この場合は、弦の交換が必要です。
≪予算の立て方≫
最後に、ピアノそのものの見立てとは角度が違いますが、どのくらい予算を取ればよいかという点も重大な関心事です。当社では、競争上の都合もあって、98000円ぐらいから商品を準備してます。しかし、幼稚園か小学校低学年のお子様を前提にして、買い替え無しで「あとは、自分で買いなさい」といえるまで、一台で通せるためには、できれば20万円以上のご予算をご準備いただければ、よいお買い物をしていただけるでしょう。
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